慣性質量と重力質量の違い


慣性質量と重力質量の違いを書いておきます。
(参考:「時空と重力 (物理学の廻廊) 藤井保憲さん著」)

物理で「質量」というとき、実は2種類の量があって、それらが高い精度で比例しているのでどちらも質量と呼ばれています。

■ 慣性質量 \(m_I\) とは

1種類目の質量は、ニュートンの運動方程式
$$m_I\vec{a}=\vec{F} \tag{1}$$ の \(m_I\) です。
物体の加速/減速のしにくさを表す量で、「慣性質量」と呼ばれます。

■ 重力質量 \(m_G\) とは

もう1種類の質量は、万有引力の法則による力
$$|\vec{F}| = G\frac{m_G M_G}{r^2} \tag{2}$$の \(m_G\) や \(M_G\) です。
物体の万有引力の受けやすさを表す量で、「重力質量」と呼ばれます。

なお、地表付近の重力であれば、
$$g=G\frac{M_G}{r^2}$$とおくと(2)は
$$|\vec{F}| = m_G g \tag{3}$$(\(g\) は重力加速度定数)とも表せます。

■ 慣性質量と重力質量の関係式

たしかにどちらも同じ「質量」が使われますが、起源はまったく別ですよね。

にもかかわらずこれらが比例関係にあることの理由は、一般相対性理論が与えてくれるそうです(「そうです」という言い方になっているのは私が一般相対性理論は勉強中のためです)。

ただし一般相対論を知らなくても、慣性質量 \(m_I\) と重力質量 \(m_G\) が比例関係にあることは実験から導き出すことができます。

地表付近における自由落下を表すニュートンの運動方程式は、鉛直上向きを z 方向として、(1)(3)より
$$m_I \frac{d^2z}{dt^2} = -m_G g$$両辺を \(m_I\) で割ると
$$\frac{d^2z}{dt^2} = -\frac{m_G}{m_I}g \tag{4}$$(4)の左辺については、有名なピサの斜塔の実験をはじめ、もっと精度の高い実験でも、すべての物体について自由落下の重力加速度 \(\frac{d^2z}{dt^2}\) は等しいことが知られています。ですので、(4)の左辺は定数です。
(4)の右辺の \(g\) も定数ですので \(\frac{m_G}{m_I}\) は定数、つまり \(m_I\) と \(m_G\) がすべての物体について等しい値を持つということになります。

■ 比例しているなら同じとみなせる理由

2種類の質量(\(m_I\) と \(m_G\))がすべての物体について正確に比例しているのであれば、\(m_I\) と \(m_G\) は同じものとみなせます。

理由は、比例定数が 1 になるように基準値(目盛り)を調整すればよいからです。

例えば、もしも \(m_I\) と \(m_G\) の単位量を別々に決めて、比 \(\frac{m_G}{m_I}\) の値がすべての物体について 2 になったとしたら、\(m_G\) の単位量を 2 倍にすれば、\(m_G\) の数値は 2 分の 1 になりますので、比を 1 にすることができます。
するとすべての物体について \(m_G = m_I\) と考えてよいことになります。

■ 重力以外の力の受けやすさは慣性質量と比例関係にない

重力質量は、物体の万有引力の受けやすさを表すと書きました。

では例えば静電気力(クーロン力)の受けやすさを表す電荷 \(q\) についてはどうでしょうか。

クーロン力を表す式
$$|\vec{F}| = \frac{1}{4\pi \varepsilon_0} \frac{q_1 q_2}{r^2}$$と(1)からも同様にして(4)に相当する式が出てきます。その場合 \(\frac{m_G}{m_I}\) の代わりに \(\frac{q}{m_I}\) という比(「質量電荷比」)が現れます。

\(\frac{q}{m_I}\) の値は、電子、陽子、中性子など粒子によって異なることがわかっていますので、電荷 \(q\) と慣性質量 \(m_I\) を同定することはできません。

余談ですが、地球から宇宙人に送信する情報として、電子の \(\frac{q}{m_I}\) の値が提案されているというのをテレビで見た記憶があります。

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